日本介護システム株式会社で、訪問理美容師を育てる研修トレーナーをしております、東岡と申します。
KamiBitoは現在、全国の介護福祉施設約4,600施設でご利用を頂いています。
年齢やご病気、障がいなど、様々な理由から美容院に訪れることが難しい方の「髪を切りたい」という願いを叶えるサービスがあります。それが訪問理美容です。
今回のコラムでは、多くの方が疑問に思われる「訪問理美容に介護保険は使えるのか?」というテーマについて、制度の仕組みと、実際に負担を減らすための具体的なテクニックを詳しく解説していきます。
「外出が難しいから家に来てほしいけれど、全額自己負担だと高いのでは?」と不安に思っている方の「自分らしくありたい」という願いを、制度の面からバックアップするヒントになれば幸いです。

結論からお伝えすると、訪問理美容の「利用料金そのもの」に介護保険は適用されません。介護保険法において、理美容は日常生活を営む上で直接必要な行為ではなく、あくまで嗜好品の範囲内であると定義されているためです。しかし前回の記事でもお話したように、身だしなみを整えることはQOLの向上や気持ちを明るく前向きにしてくれたりなど、嬉しい変化を数多く生み出します。その事実を考慮して、自治体独自のクーポンや助成金を交付している自治体も実は数多くあります。
例えば、次のような自治体では、独自の福祉サービスとして「訪問理美容サービス利用券(助成券)」を発行しています。
①東京都武蔵野市
65歳以上、要介護3-5の認定がある、寝たきり又はぞれに準じた状態の市民が対象。年間5回の訪問理美容クーポンを発行し、自己負担額はなし(無料)。
②東京都中野区
要介護3~5の、在宅で寝たきりまたは認知症により一般の美容室へ行くことが難しい人が対象。2か月に1枚の割合で、クーポンを1年間に6枚まで発行。1回につき1,500円の負担で利用可能。
③大阪府泉大津市
助成券を年度最大4枚を交付。1回につき2,000円の負担で利用可能。
④福岡県飯塚市
6要介護3以上の認定を受けた在宅の高齢者で、重度の寝たきり等のため外出が困難な人対象。訪問サービス料1,700円/回を助成する。利用回数は2箇月につき1回、年6回を限度とする。
他にも全国の数多くの自治体で助成が行われています。ぜひ一度お住まいの地域の役所や、担当のケアマネジャーさんに「理美容の助成券はありますか?」と一度聞いてみてください。それだけで年間の費用を大きく抑えられる可能性があります。

訪問理美容を利用する際、単に「安いから」という理由だけで選ぶと、結局ご家族の負担が増えてしまうことがあります。大事なポイントの一つに「介護の知識があるスタイリストが在籍しているか」という点があります。
例えば寝たきりの方へのベッド上でのカットや、認知症による拒絶がある方への声掛けには、スキルや経験が必要です。経験豊富な訪問理美容師であるほど、立ち会うご家族やヘルパーさんの手を煩わせることがありません。 また弊社では、繰り返し訪問するお客様の施術中の様子(肌の状態や健康状態の変化)を注意深く見守り、何か気づいたことがあれば、ご家族や施設の担当者さまに共有することもあります。訪問理美容を通じてお客様を見守り、より毎日を健康に過ごして頂くお手伝いをする。そんな想いで日々ご自宅に伺っています。
「保険外であっても訪問理美容は受けるべきなの?お金がかかってしまうのは負担だな・・」そう思われる方もいると思います。しかし、理美容には単に「髪を整えること」だけでなく、精神面によい効果をもたらすという研究結果も存在します。
厚生労働科学研究グループによる報告(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2014/201405019A.pdf)
では、訪問理美容を受ける前後で利用者のストレス値が低下することを示唆しています。
研究の知見: 「…施術の基本的な影響として、施術後の血圧やアミラーゼが低下していた。このことから、出張理美容はストレス値の高い人にとってはそれを低減させる可能性があることが示唆される」
つまり、訪問理美容師と会話をして髪を切りすっきりすることは、気分転換だけでなくストレスも減らす効果があるといえるのです。
ぜひしてみてください。ケアマネージャーさんは訪問美容の主な利用者となる「要介護者」「高齢者」のお客様に関する広く深いネットワークを持っているためです。お知り合いの方に利用中の方が居れば、紹介してもらえることもあるでしょう。もちろん弊社にご相談頂くことも歓迎です。
介護福祉課、介護支援課など、介護サービスを取り扱う部や課にお問合せする場合が多いです。
弊社のメニュー価格では、カット単品で5,500円となっています。前述の自治体助成券を使えば、無料で受けられるケースや、自己負担1,500~2,000円程度で済むケースもあります。
1回のみのご利用も歓迎ですが、気に入ってご継続頂ける場合、ご利用者様のニーズに合わせて1-3か月に1回など、定期的な訪問スケジュールを提案させていただきます。

訪問理美容は制度上は自己負担が基本ですが、自治体の助成金を上手に利用することで、経済的な負担を大きく抑えることも可能です。
髪を整えることは、単なる贅沢ではありません。ひとりひとりが自分らしく生きるための「尊厳」を守る行為です。もし「最近外出できなくて髪が伸びっぱなしだな」と気になっている方が身近にいれば、ぜひ一度、ケアマネジャーさんや地域の窓口に相談してみてください。