日本介護システム株式会社で訪問理美容師を育てる研修トレーナーをしております、東岡と申します。
離れて暮らす親、近くにいても同居はしていない親。「まだ元気だけれど、最近ちょっと気になることが増えてきた」そんなご家族から、不安の声をよく伺います。この記事では、”介護未満”の今だからこそできる準備と、いざというときの相談先をご家族の視点でまとめて解説します。

実家に帰るたび、少しだけ気になる。冷蔵庫に同じものがいくつも入っていた。前は几帳面だった母の髪が、なんとなく整っていない。父の歩き方が、何となく以前より遅くなった気がする。でも会話は普通だし、生活もできている。「まだ大丈夫」――そう思って、また日常に戻っていく。
最近、そんな経験はないでしょうか。
介護というと、多くの人は「何か大きなことが起きてから動くもの」と考えがちです。けれど、本当に大切なのは「まだ大丈夫」な今この時期です。なぜなら、元気なうちのほうが、親自身が自分の希望を話せるからです。どんな暮らしを続けたいか。何に困っているか。それを落ち着いて聞けるのは、緊急事態が起きる前だけ。問題が小さいうちに手を打てば、選べる選択肢も多く、家族の負担も軽くて済みます。
「まだ早いかな」と思うくらいが、ちょうどいいタイミングなのです。
では、何を目印にすればいいのでしょうか。参考になるのが「フレイル」という考え方です。フレイルとは、健康と要介護のちょうど中間にある、心身が少し弱ってきた状態のこと。大事なのは、早く気づいて手を打てば、また元気な状態に戻れるという点です。だからこそサインを見逃さないことが意味を持ちます。
次のような変化がいくつか重なっていたら要注意です。
体のサイン
暮らしのサイン
心・つながりのサイン
ひとつだけなら、たまたまかもしれません。でも複数が重なってきたときは、相談を考えるサインです。特に、はっきりした理由がないのに半年で体重が大きく減っている場合は、病気が隠れていることもあるので、早めにかかりつけ医に診てもらうと安心です(※1・※2)。
※1 神奈川県「フレイル対策」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f480290/frail.html
※2 メディカルドック「『フレイルチェック』の”基本5項目”とは?」 https://medicaldoc.jp/m/healthcheck/hc0306/
「いきなり行政に相談するのは、まだ大げさかも」。そう感じるなら、まずは家族だけでもできる見守りから始めてみましょう。お金もかからず、今日からできることをご紹介します。
1. 定期的な連絡
月に2~3回、定期的に電話やビデオ通話をする習慣を設けてみましょう。声の張りや会話のかみ合い方は、体調や気分のバロメーターになります。顔が見えるビデオ通話なら、痩せていないか、顔色はどうかなどの細かい変化も良く分かります。
2. 帰省したら生活周りをさりげなくチェック
普段と変わっている様子はないか、冷蔵庫の中身や薬などの保管・管理状態、郵便物の様子などをさりげなくみて見ましょう。小言やお説教と受け止められないよう、あくまでも自然に行うことが大事です。
3. セルフチェックを一緒に行う
「指輪っかテスト」が手軽です。両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみます。隙間ができるようなら、「サルコペニア」と呼ばれる筋肉量が落ちているサインかもしれません。「気軽に健康状態がわかるんだって」と、ゲーム感覚で一緒にやってみてください(※1)。
4. 「外に出る」きっかけをつくる
フレイル予防で意外と大事なのが、運動よりも「人とのつながり」だと言われています。一緒に散歩する、近所の集まりや趣味の会を勧める、買い物に誘う。人との交流の機会を積極的に作ることが、何よりの予防になります。
5. 見守りの仕組みを足す
遠距離なら、見守り家電やセンサー、安否確認つきの宅配弁当なども選択肢です。あわせて、ご近所さんや地域の民生委員さんと顔をつないでおくと、いざというとき連絡をもらえる関係ができます。緊急連絡先やかかりつけ医の情報も、一度まとめておくと安心です。
こうした見守りを続けるうちに、「やっぱり一度プロに相談したほうがいいかも」と思える瞬間が、自然とやってきます。

家族だけで抱え込まず、専門家に相談する。その最初の窓口は決まっています。
地域包括支援センターは、高齢者とその家族のための「なんでも相談窓口」です。市区町村が設置している公的な機関で、全国に5,000か所以上あります。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が在籍し、介護・医療・福祉・暮らしの困りごとまで、幅広く相談に乗ってくれます。
ありがたいのは、相談が無料で、しかも「まだ介護が必要かどうかわからない」段階の相談も歓迎されること。「介護予防」もこのセンターの大事な役割なので、「将来のために備えたい」「最近ちょっと心配で」というレベルで、まったく問題ありません。
ポイントをいくつか挙げておきます。
相談の前に用意しておくと役立つメモ
次の情報をまとめておくと、相談の話がぐっと早く進みます。
・家族の連絡先と、相談に関われる家族の体制
・気になっているサイン(前の章のリストで当てはまったもの)
・親の年齢・生年月日
・持病・既往歴と、服用中の薬(お薬手帳があると確実)
・かかりつけ医の名前・連絡先
・親の住まいの状況(独居/同居、持ち家/賃貸 など)
※3 厚生労働省「地域包括ケアシステム(地域包括支援センターについて)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html
状況によっては、こんな窓口も役立ちます。
迷ったら、まずは地域包括支援センターへ。「何もわからない状態」から確実に一歩前へ進めます。
「少し気になる所はあるけど、相談はまだ大げさでは?」と思うかもしれません。けれど、気づいたときにまず動くことで、その後はずいぶん違ってきます。
何もしないままだと、心配だけが少しずつ積み重なっていきます。そして多くの場合、転倒や急な体調悪化といった”事件”が起きてから、慌てて対応に追われることになります。その頃には、親の状態も進んでいて、家族の負担も一気に大きくなりがちです。
一方、早めに動いてみると、定期的に第三者の目が入り、変化に早く気づけるようになります。暮らしの中の「困った」をひとつずつ減らせるので、親自身も快適に過ごせる。外出や人との交流のきっかけが増えれば、フレイルの進行も防げます。そして何より、「いざというとき相談できる相手がいる」という安心が、家族の心の余裕につながります。
小さな一歩が、後の大きな安心をつくる。これが、早めに動くことの本当の価値です。
公的な介護保険サービスは心強い制度ですが、できることが決められていて、暮らしの困りごとすべてはカバーしきれません。たとえば次のようなことは、原則として介護保険では頼めません。
そこで検討されるのが、介護認定がなくても誰でも使える「介護保険外サービス」です。実際に利用を考えた方の、よくあるきっかけはこんな場面です。
| きっかけ(親の様子) | 検討したサービスの例 |
|---|---|
| 掃除や買い物が負担になってきた | 家事代行 |
| 庭が荒れてきたが、自分では手入れできない | 家事代行・生活支援 |
| 旅行に行きたいが、一人では不安 | 介護旅行・外出付き添い |
| 美容室まで行くのが大変になってきた | 訪問理美容 |
| 離れて暮らす親に、定期的に目を入れたい | 訪問サービス全般(見守り兼) |
どれも”介護”という言葉にはまだ早い、けれど確かに困っている——
そんな「介護未満」の暮らしの隙間を埋めるのが、保険外サービスの役割です(※4)。
※4 厚生労働省・経済産業省・農林水産省「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集(保険外サービス活用ガイドブック)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000119256.html
気になる料金の目安
介護保険外サービスは料金が全額自己負担で、金額は事業者・サービス内容・地域によって幅があります。あくまで一般的な目安ですが、家事代行は1時間あたり3,000円前後から、配食サービスは1食あたり数百円程度が一つの相場感です。訪問理美容や外出付き添いは「1回いくら」「1時間いくら」など料金体系がさまざまで、出張料の有無も事業者により異なります。まずは、
この3点を見積もりで確認するところから始めると安心です。

ここで、大切な視点をひとつお伝えします。
“介護未満”の親に対して、いきなり「介護サービスを使おう」と勧めても、抵抗があることも多いでしょう。「私はまだそんな歳じゃない」「自分のことは自分でできる」。親世代にとって、”介護される”という言葉は、自尊心に触れるものだからです。
ですので、おすすめしたいのは、「介護」ではなく「暮らしを少し楽に、心地よくする」という入り口から考えることです。掃除や買い物が大変なら、その部分だけ手伝ってもらう。外出が億劫なら、来てもらえるサービスを使う。“助けられる”のではなく”便利を取り入れる”。この発想の転換だけで、受け入れてくれる確率はぐっと上がります。
その「最初の一歩」として、私たちがおすすめしたいのが訪問理美容です。
理由はシンプルで、訪問理美容は「介護」ではなく「美容」だから。美容室が家まで来てくれるのは、世話を焼かれることではなく、ちょっとした贅沢であり、リラックスできる時間です。プロに髪を整えてもらった後の、晴れやかな表情。それは親自身にとっても、それを見る家族にとっても、嬉しい時間になります。
そしてもうひとつ。定期的にプロが家に上がることで、暮らしの様子や表情の変化に、第三者が自然と気づきやすくなるという利点もあります。
※施術に伴う”気づき”であり、専門的な見守りや医療・介護の代わりになるものではありません。気になる変化があれば、地域包括支援センターやかかりつけ医にご相談ください。
日本介護システム株式会社では、ご家族の「その先」も支えられるよう、訪問理美容だけでなく複数のサービスをご用意しています。
たとえば、掃除や買い物が負担になってきたときの家事代行。旅行に行きたいけれど家族のみでは不安、という親御さんのための介護旅行。暮らしの困りごとに合わせて、必要なものを必要なぶんだけご提案します。
ばらばらの業者を家族が毎回探して手配する——その手間と不安が、ひとつの窓口にまとまる。これは、離れて暮らす子世代にとって、大きな安心ではないでしょうか。「美容も、家事も、お出かけも、まとめて相談できる相手がいる」。それが、日本介護システムがご家族に届けたい価値です。
もちろん、無理におすすめすることはありません。親御さんの暮らしを見ながら、本当に必要になったときに、そっと次の一歩をご一緒できればと考えています。
A. 「介護」という言葉は使わず、「便利」「楽になる」「ちょっとした贅沢」という切り口で話してみてください。地域包括支援センターは、ご本人を連れて行かなくても家族だけで相談できます。また、何かを勧めるときは「私が心配だから、安心したくて相談するの」と”自分を主語”にして伝えると、本人も受け入れやすくなります。
A. はい、大丈夫です。遠距離で親を支えるケースは珍しくなく、センターの相談員もそれを前提に対応してくれます。見守りサービスや配食など、地域で使えるサポートも紹介してもらえます。
A. 介護保険のサービスは、要支援・要介護の認定が必要です。一方で、家事代行・訪問理美容・介護旅行といった介護保険外サービス(自費サービス)は、認定の有無に関係なく、どなたでも利用できます。
A. 地域包括支援センターへの相談は無料です。実際にサービスを利用する場合は費用がかかります。介護保険外サービスは、事業者や内容によって料金が異なるため、まずは内容と料金を確認するところから始めましょう。

親の「まだ大丈夫」は、永遠には続きません。だからこそ、その「まだ」のうちにできることがたくさんあります。
まずは、親の様子のサインに気を配る。週に一度、電話をかけてみる。気になったら、地域包括支援センターに相談してみる。そして、親が笑顔で受け入れてくれる「最初の一歩」から、暮らしを整えていく。
完璧にやろうとしなくても大丈夫です。小さな一歩を、今日ひとつ。その積み重ねが、親御さんとご家族の、これからの安心をつくります。
「何から始めればいいか分からない」というときは、まずはお住まいの地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談するところから始めてみてください。
また、訪問理美容のことでお困りの方、その他の日常の困りごとについてご相談したい方は、ぜひ当社にもお気軽にお問い合わせください。ご利用者様の状態やご要望に合わせたサービスをご提案します。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。制度の詳細やサービス内容は、お住まいの自治体・各事業者の最新情報をご確認ください。

執筆:東岡 忍(ひがしおか しのぶ)/ KamiBito訪問理美容研修トレーナー
現場での豊富な訪問理美容経験を経て、現在プロを育てる研修トレーナーとして活動。
中学卒業後母の勧めで美容学校を目指し、15歳で京都の美容室に住み込みで勉強。介護施設や医療機関にも勤務。子育てと両立しながら23歳で美容師資格を取得。現在は福祉と美容の知識を活かして研修講師として活動。介護福祉士実務者研修や認知症介助士も取得し、現在もそのほか資格取得に挑戦中。研修で知識や介護現場でのノウハウをより多く伝えるため、日々学び続けている。
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